皆さんこんにちは、シロネコ書房(@shironeko_shobo)です。
「分からないことがあったらGoogle先生に聞け!」
……なんて言われるように、ネットにおける情報検索はもはや我々の日常の一部です。
しかし不思議なことに、ネット検索で手に入れた情報ってすぐに忘れてしまうんですよね。
料理のレシピ調べて、「よし作ろう!」と思っても、分量や調理過程を何度も見直して……気づけばスマホは油まみれ。
作業効率も悪く、何度料理を焦がしそうになったことか……。
実はこれ、私たちの脳が「容易に手に入れられる情報を記憶しようとしなくなる」ことが原因となっています。
そして、「グーグル効果」と呼ばれるこの現象は、私たちが「頭空っぽの木偶人形」になる危険性をはらんでいるのです!
目次
グーグル効果

日経サイエンス2014年3月号『グーグル効果 ネットが変える脳』(D. M. ウェグナーらによる)は、インターネットの普及が、物事に対する私たちの「記憶しよう」とする衝動を極端に弱めているといいます。
そしてそれは、「記憶をシェアする」という行為の果てであり、私たちがこれから「インターネット」という巨大な脳の一部になり果てることの予兆だというのです。
記憶の交換システム
もともと私たちは、集団で記憶をシェアする仕組みを持っています。
「人間は行動な知能を持った知的生命体である」だなんて言われていますが、個人が記憶できる情報の上限などたかが知れています。
ハードディスクやフラッシュメモリに記憶容量上限があるように、私たちもある程度決まった量の情報しか記憶できないのです。
そこで、自分にとって覚えるまでもない=重要でないと判断した情報は、集団内の誰かに記憶を委託します。その相手は、友達、恋人、家族、兄弟、企業など様々です。
そのうえで、私たちが覚えておくべきことは「誰がどういった情報を持っているか」ということだけです。
そうすれば、自分の脳の記憶スペースを節約しつつ、必要な時にその人から情報を引き出すことができます。
こうして特定の情報を記憶する責任を他者にゆだねることで、逆に今持っている自分の記憶分野の情報をさらに深化させることが出来るのです。
個々人の記憶リソースを節約すると共に、集団としては質の高い「深化した記憶」を共有できるということですね。
これが、私たち人間のもつ情報共有のシステムです。
情報共有システムの欠点
この理屈で言えば、単純に「多様な記憶を持った多くの人々」が存在するグループ内に身を置いていれば、大量かつ質の高い情報を必要な時に手に入れられるということになります。
しかし、「誰がどういう情報を持っているか」については記憶しなければならないため、それを覚えるだけでも個人の脳は手一杯。
いくら質の高い情報が集まっていても、効率よくアクセスできないのであれば宝の持ち腐れです。
これが情報記憶システムの欠点になります。
しかし、この欠点を克服できる存在がただ一人だけいます。
彼は、たった一人で世の中のあらゆる情報を記憶し、また、私たちが求める情報をすぐに引き出してくれます。
また、欲しい情報を聞きにわざわざ足を運ばなくていいようにと、常に私たちのそばにいてくれます。
そう、「彼の名」は「インターネット」。
グーグル先生を中心に据えた、情報検索ネットワークです。
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インターネットは最強の情報共有パートナー
インターネットの発達は、個人のあらゆる悩みに対して、適切な回答を即座にもたらしてくれる環境をもたらしました。
こうした様々な「知りたい!」に対して迅速な情報提供をもたらしてくれるインターネットは、現代人の問題解決の最強のパートナーとなったのです。
すると何が起こるか。勘のいい皆さんならもうお分かりですよね。
そう、聞けばなんでも答えてくれる優秀な情報共有パートナーが出来たことで、私たちは個人として「記憶する」ことを放棄し始めたのです。
こう思う心はあらゆる情報の価値を下げ、私たちの記憶欲求を根こそぎ奪っていきます。
これが、ウェグナーらが提唱した「グーグル効果」なのです。
ネットの力を自分の力と勘違いする
また、ウェグナーらによれば、人間はインターネットの情報を自分自身の知識だと勘違いする傾向があるとのことです。
インターネットを用いた記憶力評価実験
スパロウらは、コロンビア大学においてインターネットを用いた人間の記憶力評価の実験を行った。
まず、被験者達に自分の記憶力を自己評価してもらう。
次に被験者たちを以下の二つのグループに分け、それぞれ雑学問題に回答してもらう。
①インターネットを利用して雑学問題に回答する
②インターネットを利用せずに雑学問題に回答する
回答が終了したら、再度自身の記憶力評価を行ってもらう。
結果、インターネットを利用して回答した①のグループの方が、自らの記憶力を高く報告する傾向があった。
インターネット検索で得た知識で回答を行ったのにも関わらず、問題に正解したのは自身の記憶力や知的能力が優れていたからだと錯覚したのである。
この実験からは、人間がインターネットを自分の脳の一部として捉えているということを示しています。
私たちは日ごろから、他人のふんどしで知識相撲をとっているのです。
「他人任せの知識」の危機
情報の記憶をインターネットに任せきりにした人間は、眼前の問題解決をスマートに行えるようになりました。
なにせ、日常の些細な「困った」から、ビジネスを成功に導くためのヒントまで、さまざまな情報をいつでもどこでも手に入れられるようになったのですから。
インターネットという最強の情報パートナーを手に入れた我々は、ある種の万能感まで得られる領域までたどり着いています。
しかし、ちょっと考えてみてください。
いくらインターネットから好きに情報を引き出せるとは言っても、それはあくまでも「他人の知識」です。
そればかりに頼っている人間がどうなるか。
答えは明白。自分でものを考えることのできない「頭空っぽ人間」になってしまうのです。
インターネットを用いて問題解決を行ったとして、それは借り物の力です。
知識と経験とを己の記憶に刻み込み、自分一人で問題を解決できるようになって初めて、それを知性と呼びます。
同じ料理を作るのに毎回クックパッド先生に頼っているようでは、料理の上達は見込めません。
自分で考え、覚え、実行する力というのは、いつの時代でも大事なことなのです。
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新しい情報世界に必要な人材
ウェグナーらは、高度に情報化した社会が今後どのような形態をとるのかということについても触れています。
彼は、『私たちはこれからインターネットという巨大な脳の一部となり、新しい知性を発展させていくことになるかもしれない』という旨の言葉を述べています。
それは、個人個人の脳や記憶を超越した、集合的で全体的な知能を、私たち自身が作り上げていくということです。
では、そのような新世界で重宝される人間とはどんな人間でしょうか。
答えは簡単。
「インターネットという巨大な脳に新しい情報的価値を与えてくれる人間」です。
言い換えれば、「ネット上に存在しない新しいアイデアや考えを持つ人間」が圧倒的に評価されるということです。
大抵の場合、こうした人々は各分野の「専門家」として活躍しています。
深く膨大な知識と鋭い洞察力をもった専門家たちは、脳の成長に欠かせない最高の情報提供者として、インターネットから厚い待遇を受けることになります。
次に評価されるのは、「既存の考えをまとめられる、深化させる、補足することのできる人間」です。
専門家たちの考えやアイデアは確かに貴重なものですが、往々にして難解な内容になってしまうものです。
そこで、その内容を整理・一般化し、広く皆に共有することが出来る人間がインターネットには評価されていきます。
言うなれば、情報の「編集者」達でしょうか。
これには、テレビ・雑誌といった各種マスメディアから、ブログやサイトを運営している個人まで、多くの人間が含まれます。
脳に投入された情報を整えてくれる彼等もまた、インターネットにとってはありがたい存在なのです。
一方で、まったくインターネットに評価されない人たちがいます。
それは、「インターネットから情報を引き出すだけ」の人間。
つまりは、先ほど挙げた「頭空っぽ人間」がこれに当てはまります。
彼等は、「専門家」や「編集者」達が苦労してインターネットに提供した情報を情報を貪るだけ貪って、自分たちからは何も提供しようとしません。
その姿はまさに「インターネットのハイエナ」。当然評価はされません。
まぁインターネットにしても、そもそも利用されることが目的なので彼らを拒絶することはしませんが……。
このように、この先作り上げられていくであろう「新しい知性」としてインターネットは、私たちをハッキリと区別し、評価します。
少しでもインターネットからの恩恵を受けたければ、「専門家」にはなれなくても、せめて「編集者」として貢献していく必要があるのです。
まとめ
情報共有の最強のパートナーとしてインターネットを獲得した私たちは、膨大な情報にアクセスできるようになった反面、「グーグル効果」によって「空っぽ頭の木偶人形」になる危機に陥っています。
そして、情報化が促進するこの先の世の中で、全体に寄与する情報の提供者・編集者たちが圧倒的に優位に立つことは明白です。
ぜひ、インターネットの「利用者」としてだけでなく、新たな「情報の発信者」として、あなたも活躍してみてはいかがでしょうか。
大丈夫、難しいことじゃありません。行きつけのパン屋の専門家になるだけでいいんです。
「○○ベーカリーのチョココロネはうまい!」なんて情報でも、インターネットは喜んで評価してくれますから。
ではでは、またまた。
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