・頑張って書いた企画書なのにまったく通らない! ・綿密な下調べを基に書き上げたレポートなのに、なぜか評価が低い! ・自分の専門分野の説明がうまく伝わらない!
このような経験を、一度でもしたことがある……そう、そこのあなた!
実はこうした問題は、あなたが書いた文章が、
あなたのための文章になってしまっている
ことから生じているのです!
確かに、大体の人が『そのつもり』で書いたことに間違いはないでしょう。
しかしそのまま提出しても、上司は確実にいい顔はしないでしょうねぇ…。
さて!どういうことか!
さっそく見ていきましょう!
目次
内容が「難解だけど詳しい」と「薄いけど簡単」 どちらがいい?
例えば、「酸素」について、以下のような2つの説明文があったとします。
ざっと目を通してみてください。
原子番号8、原子量16.00の非金属元素である。元素記号は O。周期表では第16族元素(カルコゲン)および第二周期元素に属し、電気陰性度が大きいため反応性に富み、他の殆どの元素と化合物(特に酸化物)を作る。標準状態では2個の酸素原子が二重結合した無味無臭無色透明の二原子分子である酸素分子 O2 として存在する。宇宙では水素、ヘリウムに次いで3番目に多くの質量を占め、ケイ素量を106としたときの比率は 2.38 × 107 である
私達が普段吸っている空気に2含まれている気体で、人間のほか多くの生物にとって、生きるのに必要不可欠なものです。
中学の理科で習うように、元素記号は Oで、普段はこれが2つくっついたO2が酸素分子として空気中に存在しているのですね。物が燃えるのに必要な気体でもあり、また、鉄などを錆びさせる作用もあります。
さて、みなさんは上の二つのうち、どちらがより良い文章だと思ったでしょうか。
そうですね、上の文章は内容が詳しくて、専門的です。しかし見慣れない専門用語が多く使われていて、内容が難しく頭に入ってきにくくなっています。「しっかりしすぎている」とでも言いましょうか。
それに対し、下の文章は内容の面では物足りなさを感じますが、聞きなれた単語や表現が使われ、すらすら読めることで、理解も容易いものになっています。
そしてアシスタントの二人と同じように、多くの人は下の簡単な説明の方に良いイメージを持つんです。
※酸素説明文例の上は、Wikipediaからの引用、下は僕が書いた文章です。
人間は「脳が理解しやすい」文章を好む
さて、なぜ人は簡単な文章の方が良い文章だと思うのでしょうか。
それは、人の脳が「理解や処理が簡単な情報」を好むからで、これを心理学の用語で処理の流暢性(りゅうちょうせい)と言います。
もう少し説明を加えると、人は自分にとって分かりやすい、すらすらと意味が理解できるようなものにはポジティブな反応を示し、反対に、難解で、読み解くのに時間を要するような事柄にはネガティブな反応を示す……ってことです。

つまり!!
自分の文章をより好意的に受け取ってもらうには、相手にとって理解がしやすい、流暢性の高い文章を書くことが必要になるわけです。
しかし、企画書など、人に評価されるような文章を作成しようとした時に書かれるものは、この処理の流暢性が非常に低い場合が多いのです。
なぜなら、そうした場合、大体の書き手は「詳しくて、専門的で、しっかりした」文章を書こう!と、意気込み、そこにどうしても自分の知識や経験をフルで詰め込みたくなってしまうからなんです。(私自身これを痛感しています……)
そうすると、自分の知る無駄に難解な単語や言い回しを文章に入れ込みたくなって、さらに人によっては、そこに自尊心や、「俺はこんな難しい単語(言い回し)も知ってるんだぜ!」という謎の知識自慢も入りこんだりして……。
結果、先ほどの酸素の説明文に挙げたような、詳しくて、専門的だけど、しっかりしすぎている、一体その文章は誰のためのものなの?と突っ込みたくなるような自己満足文が出来上がるわけです。
それでは本末転倒です。
何かを伝えるため、誰かに気にいってもらうための文章を書くのなら、読み手により分かりやすく、理解されるものでなくては意味がありません。
そのためには、自分本位な文章を捨て、読み手に取って分かりやすい、流暢性の高い文章を書くことが必要になるのです。
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流暢性の高い文章を書くには
そう、肝心なのはそこですよね。
ここからは、具体的にどうすれば流暢性の高い文章が書けるのかを、3つのポイントに分けて紹介していきます。
1、字はできるだけきれいに
これは手書きの場合ですが、文章を構成する文字はできるだけきれいに書きましょう。
字の上手さは人それぞれあるでしょうが、手書きの場合、流暢性を左右する大事な要素になります。
汚い字で書かれた文章は、それだけで難しい・分かり辛い印象を相手に与え、流暢性を下げてしまいます。
特に履歴書など、人物評価が絡む書類等を作成するときには注意が必要です。
なぜなら、流暢性の高い文章は、それだけで真実性が高いと思わせることができ、また、書き手の頭が良いとさえ感じさせることができるからです!
きれいな字は、あなたの文章を見た目以上に支えてくれます。
……しかし、逆も然り。
字の汚さだけで「頭が悪そう」など、人物評価にさえ悪影響が及ぶような文章は絶対に書かないようにしましょう。
「筆を執ったら、これから書く字1字1字が自分自身」
この意識を忘れてはいけません!
また、相手が読めないことが分かっているのに、行書や草書で文章を書くのはやめましょう。
先にも述べましたが、文章は相手に伝わらなければ意味がありません。
あなたが達筆であるという自慢は、本当にその文章の中で必要でしょうか。
(「舟を編む」の馬締さんみたいなことになっちゃいますからね!)
2、文字は見やすくはっきりと
これは手書きでも、デジタルの文章でも共通です。
文字は濃く、はっきりとさせること。これが案外大事です。
「見やすい文字」というのは、言い換えれば「脳が認識しやすい」文字ということであり、それはそのまま処理の流暢性の向上につながるからです。
デジタルの場合だと、例えばこのように
背景と文字のコントラストが弱いと、大変読みにくい文章になってしまいます。
変なこだわりは持たずに、
このように、背景と文字はコントラストをはっきりとさせることが大事です。
また、特に理由がない場合、使用するフォントも、見やすく、読みやすいものが好まれます。
3、使う単語・言い回しは簡単なものを
これまで何度も述べてきたことで、そして一番大切なポイントです。
文中に使う単語や言い回しは、極力シンプルなものにしましょう。
いろんなものを詰め込もうと、下手に専門的な単語や難解な表現を使っても、ただただ流暢性を下げてしまうだけです。
特に、多くの人に読んでもらうことを目的とした文章の場合、中高生が理解できるレベルの単語・表現以外は使わない方が無難です。
「その単語を使わないと伝わらない!」「どうしても使いたい表現がある」……というのであれば、読み仮名や解説を加えるのを忘れないようにしましょう。
伝わらない言葉は「死んでいる」も同義です。
自己満足で終わってしまうような表現は控えて、可能な限り読み手に寄り添った文章構成を心掛けてください。
まとめ
さて、今回は人に伝わる文章の書き方を、「流暢性の処理」という心理効果の観点から見てきました。
文章の書き方として心掛けるべきポイントを3つ挙げてきたわけですが、振り返ってみると
あれ?当たり前のことじゃね?と思う方も多いかと思います。
そうです、実は直感的に分かるような当たり前のことなんです!
人に伝えたいことがあるなら、簡単に分かりやすく書く!!
この一言に尽きます。
しかしそうはいっても、いろいろと無駄なものを「書きたくなってしまう」人が多いのも事実。
そこは一度、客観的に自分の文章と向き合って、「この言い回しは分かり辛くないか」「この単語は相手が理解できそうか」「ここの文章は蛇足ではないか」など、いろいろ推敲してみることで、独りよがりな文章を脱することができます。
あれもこれもと小難しいことを並べても、相手に好意的に受け取ってもらえなければ、企画は通りませんし、あなたの評価も上がりません。
「この文章の内容を伝えるために、本当に必要なことは何なのか」をよく考えて、無駄なものを省いた文章を考えることが、一番大事なことなんです。
「自己満足でない、読み手に寄り添った文章を」をキーフレーズに、今後の企画書づくりを頑張ってくださいね。
それでは、今回はこのへんで!
ではでは、またまた!
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