皆さんこんにちは、シロネコ書房(@shironeko_shobo)です。
「偏見」や「差別」というワードを聞いて、「良くないものだ」と思う人は多いでしょう。
しかし、大抵の人は無意識のうちに、誰かを傷つけるような固定概念を持ってしまっているんです。
しかも、それらは誰に扇動されるでもなく、自分の頭の中で育て上げてしまっているものがほとんどなんです。
今回は、私たちが身勝手な差別や偏見を生み出してしまう原因、「確証バイアス」についてお話していきます。
目次
確証バイアス

私たちには、自分にとって都合の良い情報にばかり目を向けてしまう傾向があります。
例えば、スポーツの国際大会で多くの黒人選手が活躍する姿を見て
と思ったとしましょう。
すると、脳は次から「黒人は運動が得意だ」という情報に当てはまるものだけを重要視するようになります。
そうすることで、「あぁ、やっぱり黒人のひとは運動が得意なんだ」と、自分の考えが正しかったことを確かめると共に、その傾向をより強めるのです。
もちろん、「運動は苦手」「インドア派だ」という黒人の人はいます。目立たないか、表に出ていないだけなのです。
しかしこの過程においては、そういった人たちの存在は『一部の例外』として軽んじられるか、無視されてしまいます。
そして、「運動が得意」という自分の考えに一致する黒人の方を見た時のみ「やっぱりな!」と重要視してしまうのです。
このように私たちの脳には、自分の仮説や信念に一致する例を重要視してしまう傾向があります。
「自分の考えは正しいんだ!」ということを確かめるための、都合の良い現実しか見えていないのです。
こうした身勝手な心の性質は確証バイアスと呼ばれます。
私たちの脳は、思った以上に先入観を持って世の中を見てしまうものなのです。
差別や偏見はこうして生まれる
都合のいい思い込みは、時として差別や偏見に変わります。
確証バイアスによって自分に都合よく強化されていく情報は、往々にして極端な考えに発展します。
などなど、一方的で心無い差別の声を生み出してしまうのです。
しかし、そうした声を発する人たちは、それが差別や偏見といった「悪いもの」だとは思っていません。
なぜなら、その声の元となる考えは、これまでに自分が何度も何度も「やっぱりな!正しい考えなんだ!」と繰り返し確認してきたものだからです。
ですから、差別の声を投げかける人たちに「そういうこと言うのやめなよ」といっても「なんで?当たり前のこと言ってるだけじゃないか!差別だなんてとんでもない!」と返されます。
彼等にとって、その声は『正しいもの』であり、まさしく『正義』なのです。
しかし、その正義には都合のよさ100%の思い込みが練りこまれています。
見たいものだけ見て、聞きたいものだけ聞いて作り上げた正義は、ただ人を傷つけるナイフでしかありません。
まぁ、本人たちにしたら、それは悪を裁く『聖剣』なのでしょうが……。
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様々な確証バイアス
私たちの日常には、確証バイアスから生み出されたものが溢れています。
・学校行事のほとんどが雨だったのだから、私は雨男or雨女にちがいない!
・彼女は血液型がA型。だから几帳面でまじめなんだなぁ
・田舎の人は親切だけど、都会の人って冷たいよね……
・暗闇で本を読むと目が悪くなるぞ!
・女性は体温が男性より高いから、寿司職人には向いていないんだ
・○○神社にお参りすると恋が叶うって!
・ブラジルの人って、みんな明るくて楽しそうだよね!
少し考えてみるだけでもたくさんありますね。
しかし、これらは全て根拠のない誤った情報です。
人間の体温には男女関わらず個人差があります。
『恋が叶う神社!』と謳っていれば、片思い中の人が多く訪れますから、そのうちの中の幾人かの恋は実際に叶うでしょう。
田舎にも閉鎖的でよそ者に冷たい人がいますし、反対に都会にだって心暖かく親切な人がいます。
※詳しくはこちら

根暗なブラジル人だって絶対にいます。
血液型占いや動物占いなどを見て、「すごい!私の性格あたってる!」と納得するのは、バーナム効果です。
広く誰にでも当てはまる言葉を言われたときに「それは他の誰でもない、まさに自分のことだ!」と勘違いしてしまう現象。
特に、語り手がその道の権威だったり、内容が前向きなものだとより効果が高まる。
「自分のことを分かってくれている!」という気持ちが語り手への信頼を生み出すため、各種の占いや詐欺に広く用いられている。
こんな風に、ちょっと考えれば「これはおかしい」と分かることなのに、私たちはそうしません。
何の疑いもなく、自分に都合の良い情報にばかり目をやってしまいます。
そうやって、自分の見たい世界だけを見ていくのです。
確証バイアスから抜け出せる? ― プロでさえハマる罠 ―
確証バイアスに陥っても、いいことなんてほとんどありません。
しかし、「じゃあ」といって確証バイアスから抜け出すことも、そうそう簡単にできることでははないのです。
それを証明するのがこちら。
各方面におけるプロフェッショナルの人々でさえも、確証バイアスにとらわれてしまうのだという事実です。
警察は、「こいつが犯人に違いない」と思い込んだ一般人を追い詰めるための証拠を探してしまうため、真犯人の解明につながる情報を軽視してしまいます。果ては「誤認逮捕」なんてことも……。
また、研究者たちは、自分たちが研究している理論を後押しする実験結果にばかりを重んじて、反証する要素を見逃しがちにになってしまいます。
間違えることが許されない、常に頭をめぐらしているような人々でさえ、このような間違いを犯してしまうのです。
「見たいものだけを見る」というのは、もはや人間の変えられない性なのかもしれません。
確証バイアスが生み出す世界
確証バイアスによる思い込みや信念が広く人々に共有されると、それは迷信や社会通念に姿を変えます。
そうした社会通念はメディア等で繰り返し報道されることになるため、関連する個人の信念がよりいっそう「正しい」と強化されてしまうのです。
これを、心理学用語で「利用可能性カスケード」と言います
メディアで報道される物事が、非常に簡略化されていることにも注意が必要です。
なぜなら、私たちは無意識のうちに「理解が簡単なもの=真実である」という軽はずみな考え方に陥ることがあるからです。
※併せて読みたい
人は分かりやすいものを真実だと思い込む!「処理の流暢性」がもたらす心理とは
また、ニュース等で放送されることで、自分が容易に思い出せるようになった物事を人は正しいと思ってしまう傾向があります。
これを「利用可能性ヒューリスティック」といい、これもまた、確証バイアスを強める要因になっているのです。
このようにして強化・共有から定説化された社会通念は、非常に修正されにくいのが特徴です。
世界には未だ解決されていない差別や迫害の問題が多く存在しています。
世の中を先入観をもって眺めてしまうこのやっかいな脳のクセは、決して無視できるものではないのです。
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確証バイアスに陥りやすい現代

現代は、特に確証バイアスに陥りやすい時代だと言われています。
近年に入って飛躍的にその規模を拡大したインターネットには、たくさんの情報が飛び交っています。
例えばAという情報に対してはポジティブな意見もネガティブな意見も存在するはずで、そのどちらにも私たちはアクセスが可能です。
しかし、実際のところ人は自分の信念に沿う記事や情報ばかりを閲覧してしまうことが実験から明らかになっています。
また、各種SNSでは自分と同じ価値観や考えを持つ人とつながりやすくなっているため、自分にとって都合の良い情報ばかりが集まりやすくなっています。
それを見て、より「やっぱり、○○は△△だ」という考えを深めていくことになってしまうのです。
さらに最近では、個人の閲覧履歴から当人の興味に合うサイトや商品が上位表示される仕組みが出来上がっています。
欲しい情報にすぐアクセス出来るのは確かに便利ですが、自分が信じている物事への確証が極端に強まる危険性もあるのです。
世の中に溢れる情報の扱い方を一歩間違えれば、あなたもたちまち狂信者や差別主義者に早変わりしてしまいます。
「それは本当に正しいのか」
一面的にではなく、多面的に物事を見る目をぜひ養ってください。
まとめ
確証バイアスは、私たちの脳の中に深くその根を張っています。
恐ろしいのは、自ら育て上げた考えや価値観が、知らず知らずのうちに他人を傷つけてしまっているということです。
しかも、当人たちはそれを「正義」だと信じて疑いません。
現代の魔女裁判は、私たちの頭の中から始まるのです。
全てをフラットな目線で見ることは難しいですが、眼前の情報に疑問を呈することはできます。
「これ、本当なのかな?」と一歩踏み込んでみることで、確証バイアスの罠から逃れるヒントを得ることが出来るのです。
また人は身勝手な生き物ですから、一度自分の中で作り上げてしまった価値観をそうそう簡単に手放すことが出来ません。
※詳しくはこちら

独りよがりな思いに沈んでしまう前に、ぜひ一度、客観的な目線を持ってみてください。
今回はこの辺で。
ではでは、またまた!
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