皆さん、こんにちは。シロネコ書房です。
「ツンデレ」という言葉を聞いて、皆さんはどんなキャラクター達を思い浮かべるでしょうか。
『ゼロの使い魔』のルイズ・フランソワーズ?『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』の高坂桐乃?『涼宮ハルヒの憂鬱』の涼宮ハルヒ?
王道ともいえる彼女らを筆頭に、今や数えきれないほどのツンデレキャラクター達がアニメ・漫画・ライトノベル業界に登場し、多くの人気を集めています。
「べ、別にあんたのことなんか好きでもなんでもないんだからね!」は、もはや業界の三種の神器の一つと言っても過言ではないでしょう。
しかしなぜ、私たちはこうも「ツンデレ」なキャラクターたちに引き付けられるのでしょうか。
今日は、そんなポップな疑問に心理学的な側面から迫っていきたいと思います。
目次
そもそも「ツンデレ」って何?
最初に「そもそも『ツンデレ』ってなんなの?」という方のために、その意味や定義の確認から始めていきたいと思います。
「ツンデレ」は、アニメやゲームにおけるキャラクターの特定の性格を表す言葉です。
インターネットスラングをその起源としているため、明確な定義は存在していませんが、wikiでは
ツンデレは、特定の人間関係において敵対的な態度(ツンツン)と過度に好意的な態度(デレデレ)の二つの性質を持つ様子、又はそうした人物を指す。
(具体的には)「初めはツンツンしている(敵対的)が、何かのきっかけでデレデレ(過度に好意的)状態に変化する」、「普段はツンと澄ました態度を取るが、ある条件下では特定の人物に対しデレデレといちゃつく」、「好意を持った人物に対し、デレッとした態度を取らないように自らを律し、ツンとした態度で天邪鬼として接する」ような態度である。
と説明されています。
インターネットスラングとして使用され始めた当初は、
「相手への好意に対する照れ隠しとしてツンツンしてしまっていた女の子が、あるときを境に素直にデレデレと甘えてくるようになる」
という状態のみを指す言葉だったようですが、時間の経過ともに、
「ツンツン」と「デレデレ」という性格の二面性から生じる、いわゆる「ギャップ萌え」を意味する言葉として、人々に認知されるようになりました。
簡潔に言えば、「自分の感情(好意)に対して素直にふるまえない不器用な性格(だがそれがいい)」を表す言葉だということですね。
2006年には、その年の「流行語大賞」にもノミネートされ、広く人々に知られるきっかけになりました。
現在では、男女問わず2次元キャラクターの魅力を表す言葉として使われるようになったり、現実の人間に対して用いられることも多くなってきたりと、幅広い広がりを見せつつあります。
注意すべきは、「ツンデレ」は「周囲の状況や接する人によって態度をあからさまに変える人」や、「普段は辛辣な態度なのに、都合のいい時だけデレデレと甘えてくる人」を表す言葉ではないということです。(←これ大事!)
それらは単に「性格が悪く、腹黒いヤツ」でしかありませんからね。
ツンデレの魅力
ここからは、いよいよ「ツンデレ」の魅力の秘密に迫っていきたいと思います。
ただ、先述したように、「ツンデレ」は多義的な言葉です。
そのため今回は、
「相手への好意に対する照れ隠しとしてツンツンしてしまっていた女の子が、あるときを境に素直にデレデレと甘えてくるようになる」
というツンデレ元来の意味に寄せてお話をしていこうと思います。
「ツンデレ」は面倒くさいだけ?
さて、「ツンデレ」なキャラクターは、その設定上自分の感情(好意)に対して素直に行動することが出来ません。
心の奥では「好き」と思っていている相手に対しても、酷いことを言ったり、冷たい態度をとってしまうことがあります。
そんな態度を向けられる側からすれば、普通は「気難しい人だな」「単純に怖い」とマイナスのイメージを持ってしまうものでしょう。
お世辞にも親しみやすい人とは言えないですからね。相手が ”デレる” 前にこちらから距離を置いてしまうことだって十分に考えられます。
にもかかわらず、私たちは日々「ツンデレ」なキャラクターたちに心を奪われてしまっています。
これは一体、どういうことなんでしょうか。
実は、このような現象が起こるのは、人が他人の評価を、「心の振れ幅」の大きさによって決めているからなのです。
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ゲイン・ロス効果
ある人物への好感度が、その人に対する「心の振れ幅」によって決まることを示す実験があります。
アメリカの心理学者、アロンソンとリンダーは、人物評価に関する以下のような実験を行いました。
アロンソンとリンダーの魅力度評定の実験
彼らはまず「心理学実験のアシスタント」という名目で、不特定多数の学生たち(被験者)を集めた。
続いて、学生A(サクラ)に被験者1人1人に感じた魅力度を、本人達に向けて7回続けて伝えさせた。
その7回の内容は、以下のとおりである、
- 7回とも高評価(A)
- 7回とも低評価(B)
- 最初は低評価だが、次第に高評価(C)
- 最初は高評価だが、次第に低評価(D)
この4つの条件によって、ある学生は最初から最後まで魅力度が高い(低い)と言われ続け、ある学生は次第に魅力度が高い(低い)と言われるようになった。
その後、被験者達に対して学生Aの好感度を尋ねたところ、なんと7回とも高評価を伝えられた学生(A)よりも、低評価から次第に高評価を伝えられるようになった学生(C)の方が、学生Aに対して高い好感度を持っていることが分かった。
また反対に、7回とも低評価を伝えられた学生(B)よりも、高評価から次第に低評価を伝えられるようになった学生(D)の方が、学生Aに対して悪い印象を抱いていたことが分かった。

この実験からは、ある人への好感度の形成が、単純な好意のプラスマイナスの値ではなく、その「振れ幅」に強い影響を受けて行われていることが分かります。
直感的には、初めからずっと自分のことを良く言ってくれる人に好意を持ちそうなものですが、実際には「そっけない態度からだんだんと自分を好きになってくれた相手」に対して、より良い印象を抱くようになるのです。
相手から受けとった好意と、それによって自分が相手に抱く好意とには、必ずしも比例関係があるわけではないということですね。
このように、初めからずっと好意的に評価されるよりも、好感度が低い状態から徐々に評価される方が相手に対する好感度がより高まる現象をゲイン効果、その反対をロス効果と呼びます。
この二つは、併せて「ゲイン・ロス効果」と呼ばれ、人の印象形成が「心の振れ幅」によって決定づけられることを表しています。
「ツンデレ」の神髄は「好感度ギャップ」にあり!
ゲイン・ロス効果によれば、人は最初からずっと「可愛い!」「カッコいい!」「好き!」と好意的な言葉を掛けられるよりも、徐々に好意的な感情を向けられるようになった方が、その相手に対して高い好感度を抱くようになります。
初めは冷たい態度をとられるも、徐々に自分のことを好きになってくれる……。この流れ、どこかで聞いた覚えがありませんか?
そう!「ツンデレ」です!
まさに「ツンデレ」は、この「ゲイン・ロス効果」を最大限に利用したキャラクター設定だったという訳なんです。
「相手への好意に対する照れ隠しとしてツンツンしてしまっていた女の子が、あるときを境に素直にデレデレと甘えてくるようになる」
「ツンデレ」の軸ともいえるこの性質は、彼女(彼)らに対する私たちの好感度を最大限に高めるものとして機能します。
その神髄は、マイナスからプラスへの評価の変化、つまりは好感度ギャップだということなんですね。
こうした好感度ギャップから高い評価が生じる現象は、「ツンデレ」以外にも多々見ることが出来ます。
例えば、
- 心機一転してまじめに勉強し、学校の先生になった元不良。
- 学年ビリから偏差値を40上げて有名大学に現役合格したギャル。
- 体重100キロから60キロまでダイエットに合格した芸能人
などなど、みなさんもどこかで1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
特に日本人は、恵まれない境遇から努力で這い上がった人の話や、モテない女子が美容に目覚めてものすごい美人になった話など、さえない人間が大逆転を果たすストーリーが大好きです。
こうした「好感度ギャップ大好き」な国民性も、「ツンデレ」というキャラクター設定が人気を集めた要因の1つと見ることができるでしょう。
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現実で「ツンデレ」を狙うのは危険!?
ゲイン・ロス効果を利用した「ツンデレ」というキャラクター設定は、確かに多くの人の心を引き付けています。
しかし、それを現実の世界で用いようとするのはおススメできません。
なぜなら、相手に最初に与えることになる悪印象を、その後の振る舞いによって必ずしも修正できるとは限らないからです。
人間関係において、第一印象は私たちが人物評価を行う上で非常に重要なポジションを占める要素です。
それを、成功するかも分からないゲイン・ロス効果の賭けに差し出してしまうのは、正直もったいないと言う他ありません。
好感度の変化を上手く生み出せるかは未知数な上、それを狙う前に相手が離れていってしまうかもしれないからです。
※第一印象の重要さについて、詳しくはコチラ


ゲイン・ロス効果は相手の心を大きく動かす力を秘めていますが、同時に大きなリスクも抱えています。それを狙って引き起こすのはとても難しいことなのです。
それならば、ヘタなテクニックなど用いずに、最初からコツコツと良い印象を与えていった方が、確実に周囲のあなたに対する評価を上げることが出来るでしょう。
また、タジウリという心理学者は、人の好き嫌いの感情は互いに一致する傾向があると述べています。
彼は10人の大学生を集めて討論させた後、それぞれのメンバーに対する好き嫌いの感情を自己評価させ、同時に各メンバーの自分に対する好き嫌いの感情を推測させました。
すると、自分の推測と実際の好き嫌いの感情がかなり一致することが分かったのです。(これを「好悪感情の相応性」と言います。)
「他人は自分を映す鏡」とはよく言ったもので、あなたが「ツンデレ」を真似て冷たい態度で接した相手は、それと同様の態度であなたに接するようになってしまうでしょう。
さらに、人間には「自分を好きになってくれた相手を好きになりやすい」という心の傾向があります。(これを「好意の返報性」と言います。)
ヘタに天邪鬼な態度をとって「アンタなんか嫌いよ!」と言ってしまうことは、ハッキリ言って損でしかないのです。
※好意の返報性に関連する記事

これらのことからも、相手に辛辣な態度をとってしまう「ツンデレ」は、他人からの好意を得る方法として現実的なものではないということが分かるかと思います。
アニメの「ツンデレ」キャラクターでも、それにハマる人もいれば、反対にあまり好きではないという人もいます。
極限に美化された世界のキャラでさえこのような評価を受けてしまうことがあるのですから、現実の世界に生きる私たちは、堅実に好感度を稼いでいった方が無難なのです。
あえて狙うとしたら、初対面で計らずして悪い印象を与えてしまった場合ですかね。
その時のリカバリーをしっかりと行い、その後誠実な態度であり続ければ、「ゲイン・ロス効果」によって期待以上の汚名返上を達成することが出来るでしょう。
まとめ
今回は、アニメや漫画の「ツンデレ」なキャラクターたちに、私たちが魅力を感じる理由を見てきました。
ここで重要なのは「ゲイン・ロス効果」ですが、それを私たち3次元が狙うことは現実的ではありません。
「ツンデレ」はあくまでも二次元におけるキャラクター設定として、「見て楽しむ」のが良いのです。それ以上を望むのは野暮というものでしょう。
どうぞ、以上を正しく理解して、今後も清く正しい「ツンデレ」鑑賞を楽しんでください。
最後に一言。
『とらドラ!』の逢坂大河ちゃんが好きです。でも、『化物語』の戦場ヶ原ひたぎちゃんの方がも~っと好きです!蕩れー。
それでは、またまた。
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