皆さんこんにちは、シロネコ書房(@shironeko_shobo)です。
近年、世の男女の晩婚化、そこから連鎖する少子化の問題が多く取り沙汰されています。
また、独り身世帯の増加や、生涯未婚率の上昇なども問題視されていますね。
一体なぜ、世の人々は結婚を遅らせるorしなくなってしまったのでしょうか。
今回は、人の結婚と人生を、社会背景や個々人のこころのあり方から分析していこうと思います。
目次
「結婚しない」時代

そもそも結婚って何?
もともと結婚とは、男女が「家庭」という社会的な構成単位を築き上げるための制度です。
また、その中で子供を産み育てるという、子孫を残すための社会的機能を持つものでもあります。
これまでは、男性も女性も、適齢期には相手を見つけ、結婚をすることが当たり前だと考えられてきました。
結婚は、人生において当然経るべき過程だと認識されていたのです。
晩婚化する日本
しかし、現代の日本ではその認識が大きく変わってきています。
まず、男女ともに結婚年齢が大きく上昇しました。
年齢別未婚率の推移(男性)

年齢別未婚率の推移(女性)

(出典: 内閣府HP 未婚率)
上の図は、国勢調査をもとに内閣府が作成した、男女別・年齢別の未婚率の推移を表しています。
約50年前と比べると、男女ともに、どの年代においても未婚率が上昇しているのが分かりますね。
特に男性の未婚率が高く、2010年では30代前半で2人に一人、40歳を手前にして3人に1人以上が未だ独身という結果が出ています。
また、女性の場合は、1990年代に入ってから、男性以上に急激に未婚率が上昇しています。
男性には及びませんが、2010年では40歳手前で5人に1人は未婚という状態。
1980年代では結婚していない女性は20人に1人ですから、単純に計算すると、当時に比べて約4倍もの人が未婚状態にあるわけです。
こうして実際の数字を見てみると、いかに結婚をしないor遅らせる人が増えているかが分かりますね。
また、生涯誰とも結婚をしないままで一生を終える人の予測割合を示す、生涯未婚率も増加しています。
(国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集2016年版を元に作成)
この図を見ると、2000年に入ってから、男女ともに急激に生涯未婚率が高くなっているのが分かると思います。
女性はおよそ10人に1人、男性に至っては5人に1人が生涯独身で過ごす……という驚愕の数字が示されていますね。
また、この数字は今後も上昇することが予想されているそうです。
・注意書きもしましたが、ここで言う生涯未婚率とは、一生結婚しなかった人の割合ではなく、45~49歳と50~54歳における未婚率の平均を指します。
・50歳までに結婚しなかった人は、その後も結婚をしない可能性が非常に高いことから、その周辺年齢の平均値を生涯未婚率として規定してあるのです。
こうしてみてみると、昔に比べて結婚の年齢は男女ともに後ろ倒しにされ、また生涯結婚しない人も急激に増えてきていることが分かります。
しかし、一体なぜ、人々の結婚に対する意識はこれほどまでに低くなってしまったのでしょうか。
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結婚が重視されなくなった理由

1、女性の社会進出
結婚しない人が増えている人の理由の1つに、女性の社会進出が挙げられます。
現代では、「男は外、女は家庭」という昔ながらの価値観が変容しつつあり、その中で、自らの社会的なキャリアを大切にする女性が出てきてきました。
「若いうちに男性の元に嫁ぎ、そのまま家庭の中で家事と育児をするのがこれまでの女性の役割」とされていたのが、今や「組織や会社の中でバリバリ働く」という女性が多くなってきたのです。
その結果、男女が平等に社会の中で活躍できる機会を与えられた一方で、「結婚はキャリアを形成してから……」と先送りされ、それが晩婚化を進めることになりました。
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2、経済の低迷と格差の拡大
言わずもがなですが、結婚にはお金がかかります。
婚約指輪に、結婚指輪、結婚式の費用に新婚旅行……思いつくだけでも大変な出費になりそうです。
結婚情報誌で有名な(鈍器になるほど分厚い)ゼクシィにて公表された「ゼクシィ新生活準備調査2015」によると、結納・婚約~新婚旅行までにかかる費用は、全国平均で、推計460万円にもなると報告されています。
そのうちの7割強は、平均して180万円を親や親戚から支援してもらっているという数字もありますが、それでも300万円近い金額を用意しなければなりません。
ところで、現在の一般的な社会人の平均年収はいくらなのでしょうか。
国税庁が公表した「平成27年間分給与実態統計調査」の結果を見てみると
全体平均給与……420万円(給与356万+賞与65万)
男性正社員………514万円
女性正社員………276万円
正社員平均………485万円
非正規平均………171万円
となっています。
男性正社員が圧倒的に高く、500万円を超えていますね。
これだけあれば、結婚して奥さんを1人養っても十分生活していける額です。もちろん、贅沢三昧という訳にはいきませんが。
しかし、これを見た男性諸君、「えっ、こんな不況の中で平均ってこんなに高いの……?」「賞与平均60万とか嘘だろ……」などと思っていませんか。
そうなんです、実はこの数値の測定には多額の退職金をもらう退職者 や、一部の高所得者が紛れ込んでおり、現実とはかけ離れた結果となってしまっているのです。
また、企業規模や中央値、最頻値といった指標も無視しており、世間の労働者の真の姿を映しだせてはいません。
では、実態はどうなのか。
日本の労働者の多くが勤務する、中小企業における男性正社員の月額給与の中央値は28万円、賞与が10万~20万ほどですから、年収は
28×12+20万=356万円
となります。(参考サイト:日本の平均年収、高すぎる平均と中央値の乖離について)
そう、これこそが庶民的で一般的な男性正社員の年収なのです。
(しかも、女性も合わせた全体平均にすると、304万円まで落ちる。)
ここで言う中央値とは、すべての人の給与を小さい順に並べた時のちょうど真ん中の数字を指します。
つまり、日本の中小企業に勤める全男性正社員の半分は、年356万円以下で暮らしているということなのです。
ちなみに大企業になると、これに3割増しの金額を足すとおおよその年収になるので……約464万円といったところでしょうか。おおよそ、給与実態統計調査の男女平均に近い数字となります。
ここで、先ほどの結婚にかかる費用の平均を思い出してみましょう。そう、約460万円です。
つまり、中小企業に勤める男性は、正社員として1年働いてもその費用を賄うことはできず、大企業勤めであったとしてもその99%を持っていかれてしまいます。
男女共働きであったとしても、平均的な恋人同士であれば世帯年収は600万前後、しかも二人とも正社員だった場合です。
こんな数字を見てしまっては、結婚に臆してしまう人が増えてしまっても不思議ではない気がします。
また、ここまで正社員であることを前提に話を進めてきましたが、現在の日本の労働人口の約4割は非正規雇用者です。
そして、非正規雇用者の平均年収は171万円……。
とてもじゃないですが結婚式を挙げられる稼ぎではありません。
もちろん、平均年収が一部の高所得者によって大きく膨らんでしまっているのと同様に、結婚にかかる費用の平均も、盛大に披露宴を行うカップルによって引き上げらえれていることは事実でしょう。
こちらには会社員だけでなく、自営業や自由業、社長といった人たちも含まれますからね。上を見ればきりがありません。
しかしそれでも、しょぼい額しか用意できなくて彼女をがっかりさせたらどうしよう……と考えたり、社会と自分との格差を目の当たりにして、しり込みしてしまう人も多いのではないでしょうか。
世間では、婚活や出会いの場を求めるイベントが多く催される時代にもなりました。
しかしそこでは、先ほどの平均年収の実情を知らない女性たちから
などと言われてしまうのです。
500万って言ったら、大企業男性正社員の平均よりも高いですからね。どれだけ高望みなのだろうと思ってしまいます。
しかしデータとしては、年収が300万円以下の男性の結婚率は10%を下回るという結果も存在しています。(※参照先:年収ガイド 年収別の結婚率・未婚率)
これが300万円以上になると30%ほどに跳ね上がるらしいのですが、それでも30%程度ですよ、30%。多くの男性の平均年収が350万ほどだと考えると、希望を持つには頼りない数字です。
そして、こうした実情の中で「そんなにお金を要求されるなら、結婚なんてしなくていい!俺の稼いだなけなしの金だ。全部俺のために使って生きてやる」という男性が激増してしまう……というのが現在の状況なのです。
また、たとえ結婚資金えお最低限に抑えたとしても、その先の結婚生活では、お金の問題はもっと切実にのしかかってきます。
二入分の生活費、子供の養育費やマイホーム……余裕がなければ負担となるものばかりです。
そうしたお金ばかりがかさむ結婚生活を想像して、「結婚なんてコスパが悪い」と思う人たちが現れてしまっているのが現代です。
経済の低迷と社会格差が著しく現れてきている今、彼らにとっての結婚は、ただただ煩わしいものとなり果ててしまっているのでしょう。
3、価値観の多様化
結婚が人生の必然的なイベントだったころの社会では、皆が皆同じような生活スタイルや考え方を持っていました。
しかし現代では、個人がさまざまな価値観や選択肢を持つことが許され、それぞれが個性的な人生を送れるようになったのです。
※詳しくはこちら

しかし、こうしたライフスタイルの多様化が、実は結婚の成立を妨げています。
各人が己の人生にこだわりを持って個性的な生活を送れるようになったことは、確かに心の豊かさの面ではプラスの要素かもしれません。
しかし、こだわりがあるということは、友人なり恋人なり夫婦なりの人間関係を築く上で、お互いの価値観やライフスタイルを細かく擦り合わせなければならないということでもあります。
そしてそれは、宗教、学問、仕事、住居、趣味、服装、その日の晩御飯から、愛読する小説まで、ありとあらゆる項目に及ぶのです。
みんなが同じライフスタイルを持っていた昔なら、こうした作業もここまで大変ではなかったでしょう。もともとみんなが似たり寄ったりなライフスタイルを送っていましたからね。すぐになじんだり、意気投合することができていました。
しかし、価値観が多様化し、各々の中で「私はこれが好き!これだけは譲れない!」というこだわりが出来上がっている現代では、そのすり合わせは困難を極めます。
甘党と辛党が分かりあえないような、阪神ファンと巨人ファンが言い争いをするような場面が恐ろしいほどたくさん生じてしまうからです。
そして結婚は、多くの人にとって生涯を共に過ごす相手を選ぶ行為です。
夫婦のすり合わせは、その長い年月の中で何度も何度も行われるわけですから、当然互いに合わない部分、喧嘩するような部分も数多く出てくるでしょう。
「彼の趣味が理解できない」「食べるものの好みが全く合わない」などがこれに当てはまります。
互いの食い違う部分をすり合わせる行為には、それはもう多くの労力と苦痛が伴います。阪神ファンと巨人ファンが握手しなければいけないようなものですからね。
そうした事態を想定して、「そんな苦痛に満ちた人間関係なんて築くのさえ煩わしい」と、恋愛や結婚をしない男女が増えているのです。
いうなれば、私たちが「自分自身のこだわりを愛しすぎた」結果、他人とのつながりを恐れてしまっているということですね。
これが、現代に結婚をしない人が増えている最後の理由です。
ちょっと一言+α
すり合わせの話は、フロイトが自身の論文に引用した有名な寓話、「ヤマアラシのジレンマ」に通じるものでもあります。
そしてそれは、現代人(特に若者世代)が周囲との距離を置きたがる「孤立志向」に落ち着いてしまうこととも関係しているのです。
詳しくは、先ほど紹介した記事をご覧ください。
まとめ
今回は、結婚しない人が増えていることの背景を考察してみました。
ここまでの話をもう一度まとめてみると
結婚しない人が増えている理由
- 女性の社会進出
- 経済の低迷による結婚への金銭的不安
- 個人の「こだわり」増加
このようになるでしょうか。
個人的には、3番目が最も大きな理由だと私は思っています。
今、個人でもある程度の幸福を手に入れられるようになりましたからね。お金と生活の自由を失ってまで結婚して、「自分のこだわりのライフスタイル」を手放したくないと思う人が多いのでしょう。
それでも、私は、大好きな人と生涯を添い遂げる「結婚」は素晴らしいものだと思います。
二人の子供なんてできたら、そりゃもう可愛くて仕方ないなとも思います。
しかし、それを笑顔で望めない社会的な理由があるのも事実。
どうかもっと、誰もが心に余裕を持った恋愛・結婚が出来るような社会になればなと思いつつ、今回はこの辺で。
ではでは、またまた。
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